ビデオ会議サービスでは、米マイクロソフト傘下の「スカイプ(Skype)」など数多くのプレーヤーが競争している。そのなかでZoomが目立っているのは、使い勝手の良さが支持されているためだろう。例えばビデオ会議を主催する場合、会議のテーマや日時などを決め、参加者に専用のURLまたは会議室番号とパスワードを伝えれば招待できる。
他のサービスでは、参加者それぞれがIDを持ち、事前に交換しておく必要があるものが多い。一方、Zoomは会議の主催者がアカウントとIDを持っていれば参加者はIDを作る必要がない。会議中に資料を見せるといった機能もあるほか、必要なデータ通信量がほかのサービスよりも少ないとされ通信環境が安定していることも支持を集めている大きな理由だ。
100人までの参加であれば無料で利用でき、それ以上の参加人数では月額2000円から。全国の学校の一斉休校に伴い、Zoomは4月30日まで教育機関向けに無償で提供されている。東京都内のある私立中学校ではホームルームをZoomで開催するなど、企業だけでなく教育現場にも利用が広がりつつある。
米ズーム社は2011年の設立で、19年4月にナスダックへ上場した。創業者のエリック・ヤンCEO(最高経営責任者)は中国山東省の出身で、1997年に渡米しWebex社でエンジニアとして働いていた。のちに同社を買収した米シスコシステムズでビデオ会議ツールの開発に携わっていたヤン氏は、より使い勝手のよいサービスの開発を目指し起業を決めた。
新型コロナウイルスの世界的な感染でリモートワーク需要が拡大していることも追い風となり、ズーム社の株価は20年に入ってから約7割上昇。上場時に90億ドル(約9700億円)だった時価総額は320億ドルを上回る。ズーム社が4日に発表した20年1月期の売上高は前年同期比88%増の6億2265万ドル(約666億円)、当期純利益は同3.3倍の2530万ドルだった。21年1月期も売上高は9億500万~9億1500万ドルと5割近い成長を見込んでいる。
ライドシェア大手の米ウーバー・テクノロジーズやSNSの米ピンタレストなど、上場後も赤字が続き苦戦するテック企業が目立つ。「WeWork」を運営する米ウィーカンパニーの上場延期もあり、スタートアップ企業への見方が厳しくなっている。「シリコンバレーでは7年間で結果を出さなければ投資家がCEO交代を求める」(立教大学経済学部の山縣宏之教授)といわれるなか、投資家にとっても上場後に手堅く業績を伸ばし利益を確保しているズームが魅力的に映るのだろう。
ビデオ会議ツールの製造を手がける米Owl Labsが実施した調査によると、ビデオ会議ソフトの利用者のシェアではZoomが25%、2位に「Skype for business」が続く。Zoomはスタートアップ企業や従業員数が500人以下の比較的規模の小さな企業に使われている。
コミュニケーションの新たなプラットフォームとなりつつあるZoom。リモートワークが新たな働き方として定着すれば、今後さらにシェアを伸ばしそうだ。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/030501125/
経済学者のアレクサンダー・フィールド氏は、1930年代について、「20世紀の中で最も技術的に進歩した10年間」だと表現している。